2021.12.15
【クレームを起こさないために】「苦情の本質」や「対応の基礎」を解説
- クレームを起こしたときの対応方法が知りたい
- できればクレームを起こしたくない
サービスを提供する中で、このように感じている方は多いのではないでしょうか。
今回は、クレームを起こさないために「未然に防ぐためにできること」と「クレーム対応の基礎」を医療接遇の視点から紹介します。まずは「クレームや苦情のの本質とは何か?」について解説しましょう。
「医療接遇とは?」何か気になる方は、以下記事もあわせてご覧くださいませ。
クレーム・苦情の本質とは
クレームの本質とは、商品やサービスの提供を受けた側の「期待の水準」よりも大幅に下回ったときに「不満」となって発生するものです。
ですが、人はさまざまな「期待の水準」をもっています。そのために、全ての方を満足させることはできません。
「クレームを出さないように」務めるのは大切です。ただ「クレームは必ず発生してしまう」との前提に立ち、対応策に備えることがサービス提供者の務めともいえます。
もっとも大切なのは「クレームがでないこと」ではなく「同じクレームを繰り返さないようにすること」です。
クレームを起こす側の心の内について
クレームを起こす側の心の内は、大きく以下の4つに分けられます。※ここでは、医療接遇を中心に病院へ来院した方へのクレームとなるポイントを例に紹介しましょう。
クレームのポイント | 心の内(例) |
本当に困っている | ・症状がよくなくてツラいのに、長く待たされている ・診察に呼ばれるまでの、時間の目処が分からない |
不当な扱いを受けた気がする | ・自分が先に待っているのに、他の患者の方が先に診察された |
他との比較 | ・他のクリニックでは、もっと良い対応をしてもらった |
苛立っている | ・病状から不安が募り、もともと苛立っている ・来院前から苛立っていたが、待ち時間や窓口対応で二次的にくれーむとなる |
クレームは、原因にあわせて対処することが大切です。患者様の気持ちを理解し、応えていけるよう努めることが医療接遇におけるクレーム対応ともいえます。
【クレームを起こさないために】未然にできること
クレームを起こさないために、未然にできることを解説しましょう。
未然にできること①:接遇の基礎やポイントの徹底
1つ目は、業務に従事している方々で「接遇の基礎やポイント」を徹底して押さえておきましょう。
以下のポイントを中心に、同じ職場で働く人同士が統一感を持っておきたいところです。
- あいさつ
- 言葉遣い
- 身だしなみ
- 表情
- 基本的な受け答えや対応 など
たとえばですが「前回のスタッフは丁寧だったのに対し、今回のスタッフには冷たくされた」と患者様が感じてしまった場合、それが不満となる場合があります。
不満がすぐにクレームとなる方もいれば、幾度かの経験が積み重なってクレームとなる方もいます。
スタッフ同士の接遇の統一性が問われます。丁寧な対応ができている人とそうでない人の格差が見えたとき、それが不安や不満となる場合があります。
クレームを起こさないようにするためには、事前に徹底した接遇をスタッフ間で統一しておきましょう。
未然にできること②:事前予測しておく
2つ目は、クレームに対して事前予測しておくことです。
クレームが起きてしまうのは、なにか原因があります。多くの場合、気付かぬ些細な日常の中からクレームが発生します。
たとえば、急にスタッフの欠員が出たために「人手不足」から多忙を招き、患者様へお待たせする時間が長くなってしまうことがあります。人手不足によりお待たせする時間が長くなるのは仕方がありませんが、それに対する配慮は必要です。
配慮不足から、クレームを引き起こしてしまうケースも少なくありません。
「忙しかった」というのは、スタッフ側の事情であり患者様にとっては言い訳に聞こえてしまう場合もあります。そうした事態を想定し事前予測を立てておくことでクレームを回避できる可能性が高まります。
準備といっても特別なことではありません。人手不足となった場合に、少しでも効率よくできる工夫や患者様へ「待たせてしまって申し訳ない」という気持ちを伝える配慮を、事前にスタッフ間で備えておきましょう。
未然にできること③:日頃からのコミュニケーション
3つ目は、日頃からのコミュニケーションです。
具体的には「スタッフ内同士のコミュニケーション」と「スタッフと患者様とのコミュニケーション」の両方が大切とされています。
スタッフ内同士のコミュニケーションの大切さ
患者様の状況がいつもと違うときなど、スタッフ内での「報告・連絡・相談」がクレームを防ぐポイントとなります。
スタッフみんなで状況把握をしておくことで、誰が対応したとしても配慮ある対応することができるようになります。その対応が、患者様の不安をとりのぞき、安心感へと変わる可能性も大いにあります。
スタッフと患者様とのコミュニケーションの大切さ
スタッフと患者様とで、日頃から「対話」をしやすいような環境を作っておくことも、クレームを防ぐポイントとなります。
「困ったことがあれば、どんな小さなことでもお声がけください」といった姿勢が、患者様の不安の種が小さいうちに摘み取って安心へと替えることができます。
不安がクレームに変わる前に患者様の方から気持ちを伝えて頂ければ、スタッフとしてこんなにも助かることはありません。「話しやすい環境」を作り出すことが、結果としてクレームの対策にも繋がります。
クレーム対応の4つ基礎
一般的に、どのようなクレームにも以下の4つの心得が「クレーム対応の基礎」とされています。
- 謝罪と心情理解
- 確認
- 方策の提示
- 謝罪と感謝
詳しく解説しましょう。
クレーム対策①:謝罪と心情理解
クレームが起こってしまった場合は、まず最初に謝罪をします。
「不安な気持ち」や「不快な気持ち」にさせてしまったその背景を汲み取り、心からのお詫びをするように心掛けましょう。
次に「相手がどのようなことで起こっているのか」を詳しく知るために、相手の話を聞きます。これを心情理解といいます。
心情理解をするため、話をきいているだけでもクレームが落ち着いてくるケースもあります。
心情理解のポイントも押さえておきましょう。
- まずは、話を聴く(相手の気持ちを吐き出して貰う)
- 迅速な対応
- 「傾聴」を心がけ、あいづちや間の取り方も意識
- 表情や視線も意識
クレーム対策②:確認
謝罪と心情理解ができたら、次は「確認」です。
ここでのポイントは、焦って急がないことです。ひとつの作業を丁寧に進め、具体的に状況をイメージできるように確認をとります。
クレームが発生する場合、お互いのの常識に摩擦が生じている場合もあります。摩擦が生じるその隙間を埋めるためには、正確に状況把握をすることが大切です。
具体的には、以下のポイントに的を絞りって確認をとります。クッション言葉を必要に応じて用い状況を確認すると、相手に安心感を与えることができます。
- 「いつ」「どこで」「どのようなトラブルが」「何をきっかけに」発生したかを確認
- それに対して、何が不満でクレームとなったのか
- 「誰に」または「何に」対してクレームを言っているのか
- 要求は何なのか など
確認(状況把握)をするときに役立つ「クッション言葉」をいくつか紹介しましょう。
伺いをたてるとき | ・差し支えなければ ・失礼ながら ・ご迷惑でなければ ・恐縮ではありますが |
依頼をするとき | ・恐れ入りますが ・ご迷惑とは存じますが ・お手数おかけしますが ・お忙しいところ申し訳ありませんが |
断りを申し出るとき | ・誠に申し訳ありませんが ・あいにくですが ・せっかくですが ・ご意向に添えず ・お役に立てず心苦しいのですが |
伝えにくいことを申し出るとき | ・私どもの説明が不十分でしたが ・言葉が足りなかったかもしれませんが |
また、相手のことばを丁寧語で繰り返して確認をとることも、クッション言葉のひとつとなります。
【例】「酷く長く待たされたことが苛立たしい」と、クレームが出た場合
→「大変申し訳ございません。ながらくお待ちいただいたということでございますね」
クレーム対策③:方策の提示
確認によって状況把握ができたら、方策の提示をしましょう。
ここでのポイントは「相手側には不足はない」という気持ちが伝わるような「解決策」「代替案」を提示することです。
「看護師」や「医師」と情報を共有し、診察中待合のようすを確認した上で解決策や代替案を提案します。
万一、提案が受け入れて貰えない場合や代替案を提示できない状況であれば、ときに上司に対応を引き継ぐことも必要となります。人が変わって謝罪することで、クレームを抱えていた人の気持ちも切り替わるケースも多いものです。
クレーム対策④:謝罪と感謝
最後に、再び深く謝罪をした上でご意見を頂いたことに「感謝」を述べるようにしましょう。
実は多くの方がクレームを抱えていても、言葉にして発する人は少ないといわれています。そう思うとクレームの中には、業務改善に繋がるヒントが数多く詰まっていると捉えることもできます。
患者様が不満を募らせ口にすることがないまま信頼が低下していくよりも、貴重な意見を口に出していただいたことで業務改善に繋がげることができると考えることもできます。
また、クレームに対して精一杯の誠意を見せることができれば、失いかけた信頼に対し「誠意ある対応をしてもらった」と挽回を図ることも大いにあり得ます。
大切なのは、クレームが発生する前よりも印象が良くなるよう努めることがクレーム対応のポイントです。
まとめ:【クレームを起こさないために】「苦情の本質」や「対応の基礎」を解説
今回は「クレームをおこさないために」をテーマに、クレーム対応の基礎を解説しました。また、クレームの本質やクレームを未然に防ぐためにできることも紹介いたしました。
クレームが発生したときには、とても憂鬱な気分になるものです。しかし、クレームは口にしてもらったことで業務改善に繋げることもできます。
クレームを通して院内に訪れる人の悩みが改善されていけば、後に「あのときのクレームは必要なものだった」と、感じることもあります。
接遇の心を大切に、誠意をもってクレームと向き合っていただきたいと感じております。