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「院長が伝え続ける組織」から「人が育ち合う組織」へ~多職種で取り組む継続的研修6カ月の軌跡~

「院長が伝え続ける組織」から「人が育ち合う組織」へ~多職種で取り組む継続的研修6カ月の軌跡~

医療法人社団つかだファミリークリニック(https://www.tsukafamigroup.or.jp/)

千葉県成田市

医療法人社団つかだファミリークリニック様で、スタッフ・リーダーを対象とした1年間のオーダーメイドの継続研修「メディカルホスピタリティ」を実施しています。つかだファミリークリニック様は、外来診療や在宅医療に加え、訪問看護ステーション、看護小規模多機能施設、医療強化型老人ホームなどへ事業を急拡大。昨年から4つの施設を開設するなど、患者様・利用者様を支える領域を大きく広げてこられました。

  

事業が広がれば、そこで働く「人」も増えていきます。看護、事務、訪問看護、介護など、それぞれ異なる専門性や経験を持つスタッフが加わり、多職種で一人の患者様・利用者様を支える組織へ。

  

組織が小さいうちは、院長の考えや大切にしていることを、一人ひとりのスタッフに直接伝えることができます。しかし、施設が増え、職種が増え、組織が大きくなるほど、それだけでは難しくなります。さらに医療と介護に従事する人では、これまでの「当たり前」も異なります。

  

患者様・利用者様への向き合い方、スタッフ同士の関わり方、仕事に対する考え方。院長が一人ひとりに伝え続けるのではなく、リーダーが伝え、スタッフ同士でも考え、互いに育ち合える組織へ変わっていくことが必要になります。

  

言い換えれば、院長一人で「人」を変えようとする組織より、「人が育ちあう組織」をつくること。それがメディカルホスピタリティの継続研修の目的です。メディカルホスピタリティが定着し仕組み化することを目指します。

  

今回の継続研修も、一人ひとりの患者様・利用者様への向き合い方を磨くだけでなく、自ら考えて行動する力、スタッフ同士で学び合う力、そしてリーダーがチームを育てていく力へと、段階的に取り組んでいます。研修は現在も継続中です。

  

今回は長期の取り組みの中間地点として、スタートから約半年の間に、スタッフやリーダーのマインドと行動にどのような変化が生まれてきたのかをご紹介します。

 

変化の軌跡

自分から始まり、相手、そしてスタッフ同士へ意識が移り、リーダーの意識も変化。

半年の取り組みで見えてきた大きな変化は、意識の軸の変化でした。

  

  

この流れを、以下に詳しくご紹介します。

 

まずは 「気をつけよう」から、日々の「具体的な行動」へ

研修での気づきを、忙しい現場で実践できる行動に変えていく

研修当初は、「できているつもり」と、「相手から見える自分」とのギャップに気づくところからはじめました。普段の仕事では、患者様や利用者様への対応を振り返ることはあっても、自分の表情や姿勢、話し方、あり方まで客観的に見る機会は、そう多くありません。

  

そして翌月からは、表情、視線、声のトーン、姿勢などを、実際の仕事の中でどう行動に落とし込むかを繰り返し考えていきました。すると、受講者の言葉にも変化が見え始めます。

  

<受講者のお声>

  • 出来ていると思いこまず、常にどのような表情で接しているかを気にしながら対応したいと思います。
  • マスク越しにも笑顔が伝わる様に口角を上げて話すよう意識したい。
  • 自分の話す内容だけでなく、聞いてくれている利用者様の表情も汲みとれるようにしたい。
  • 忙しい時でも表情や声のトーンに気を配り、丁寧な対応を心掛ける。

  

初回には「自分の表情が硬い」「自分の姿勢が気になる」と自分自身に向いていた視点が、徐々に「それを受け取る相手」に向き始めます。

  

 「自分がどう見えるか」から「相手にどう感じてもらいたいか」へ

自分中心の振り返りから、患者様・利用者様を起点に考えるように

さらに研修を重ねると、変化は外面的な行動だけではなくなり内面のマインドに変化が出てきました。患者様・利用者様が感じる不安や不快感について考え、「大切にされている」と感じてもらうために、自分に何ができるのかを考えるように。

  

<受講者のお声>

  • 「大切にされている」と感じることで、「人」に関する問題の多くを予防できると学び、心に残りました。相手に寄り添い、誠意を尽くす対応ができたら自信をもって良い、と自分の中に指標ができました。
  • 一方的は声掛けをしていたことがあったかもしれないが、まずは相手の気持ちを確認することを心がけていきたい。
  • 患者様のお声をよく聞き「大切にされている」と感じる対応を行いたい。

  

ここで起きている変化は、単に「正しい振る舞いを覚える」というものではありません。

「私はできているか」ではなく、

「相手にはどう伝わっているだろう」

「相手は今、どんな気持ちだろう」

「どうすれば安心してもらえるだろう」

と、判断の起点そのものが自分から相手へ移ってきています。相手を思いやることこそ、メディカルホスピタリティであり、その内面の思いやりが表面化するからこそ相手に伝わります。ある意味、メディカルホスピタリティの最重要要素と言っても過言ではありません。

  

忙しい現場だからこそ、学んだことをどう実践するか

「知っている」と「できている」の間を、振り返りながら埋めていく

もちろん、研修で理解できたからといって、翌日からすべてが自然にできるわけではありません。医療・介護の現場では、時間に追われる場面もあります。

  

実際、研修開始当初には、

<受講者のお声>

  • 忙しい事を言い訳にせず、冷静な態度をとれるように心がけていきたいです。
  • 忙しい場面では声かけや説明が控えめになることもあるため、意識して関わりたい。

という声もありました。

  

だからこそ毎月、学んで終わるのではなく、現場で実践し、次の研修で再び振り返る。その繰り返しによって、「知っていること」を少しずつ「できること」に変えていきます。

  

受講者からは、

  • 自分の改善点を、少しずつですが、自覚しながら改善できてきた様に感じます。

という声も寄せられました。

  

一朝一夕には変わらないからこそ、実践と振り返りを繰り返す。少しずつ「意識しなければできないこと」を、日常の行動へ変えていく過程が見えてきました。

  

個人の変化が、「スタッフ同士の関わり方」へ広がり始める

個人の変化が、「スタッフ同士の関わり方」へ広がり始める

研修開始から数カ月が経つと、もう一つ興味深い変化が現れました。それまで「自分がどうするか」を中心に考えていた受講者から、「スタッフ同士でどうするか」という言葉が増えてきたのです。

  

<受講者のお声>

  • 「大切にされている」と感じる対応は患者様ばかりでなく、スタッフへの対応でも必要だと感じました。
  • スタッフ同士ではつい気が緩み、配慮が難しい場面もありますが、患者様に対するホスピタリティと同じような安心感を与えるコミュニケーションを意識することは大切だと改めて感じました。

  

そしてもう少し経つとさらに一歩踏み込んだ声が聞かれるようになります。

  • お互いに身だしなみを言い合える環境づくりが必要と思いました。
  • 身だしなみなどをスタッフ間で遠慮せずにフィードバックし合える組織づくりを考えることが大切。
  • 遠慮せずに身だしなみの意見を伝えあえる環境がむしろ素敵だなと思いました。
  • お互いの身だしなみや、業務における改善点もフィードバックし合えると、より良い環境づくりに繋がると思います。

  

自分自身を整えることから始まった学びが、

「お互いに伝え合い、より良くしていけるチームをつくりたい」

という組織への視点へ広がり始めています。

  

クリニックの「人」の問題を変える、コミュニケーション

患者様との関わりから、スタッフ同士の関係づくりへ

クリニックで起こる「人」の問題は、一見すると、それぞれ別の問題に見えます。

  • 情報共有がうまくいかない。
  • 注意したいことがあっても言いにくい。
  • 職種が違うと考え方が伝わらない。
  • スタッフが受け身になってしまう。
  • リーダーが一人で抱え込んでしまう。

  

しかし、その根底には「相手をどう理解するか」「どう伝えるか」「どう受け取るか」というコミュニケーションが大きく関わっています。

  

今回の研修でも、患者様・利用者様との関わりを考えることから始まり、その視点がスタッフ同士の関係にも向けられるようになってきました。そして「自分がどうするか」だけではなく、「どうすればお互いに伝え合えるか」「どんなチームでありたいか」という問いへと広がっています。

  

一人ひとりのコミュニケーションの変化が、チームの関係性を変える。半年間の取り組みの中で、その兆しが少しずつ見えてきました。

  

多職種が集まるからこそ、「一緒に学ぶ」ことにも意味がある

職種や施設を越えて学ぶことが、組織の共通軸をつくっていく

今回のメディカルホスピタリティ継続研修には、クリニック、訪問看護、看護小規模多機能施設、ホスピスケア、事務など、さまざまな現場・職種のスタッフが参加しています。日常業務では、同じ法人で働いていても、職種や施設が違えば、じっくり意見を交わす機会は限られます。

  

研修では、あえてそうしたメンバーが一緒に考え、意見を交わす時間を設けています。

  

<受講者のお声>

  • 周りのスタッフの意見が聞けて勉強になりました。
  • 普段関われないスタッフと一緒に研修ができて貴重な時間になりました。

  

同じ患者様・利用者様を支えていても、看護職から見えていること、介護職から見えていること、事務職から見えていることは同じではありません。だからこそ大切なのは、スタッフ同士のコミュニケーションにおいても、お互いにフィードバックする際も、意見交換する際も、研修で習った「共通言語」や「共通軸」があることです。事業が拡大し、多様な専門性を持つスタッフが増えた組織だからこそ、それぞれの経験を共有し、職種を超えて共通する考え方や行動を育てていくことが、組織としての力につながっていきます。

  

リーダーも、「自分ができる」から「チームを育てる」へ

院長一人が人を育てるのではなく、組織の中で人が育つ状態を目指して

スタッフだけでなく、リーダークラスにも変化が見られています。特にテーマとなったのが、スタッフへのフィードバックです。

  

<受講者のお声>

  • スタッフの望ましくない行動について本人へフィードバックすることは難しいと思いました。

  

これは、多くの組織で起こり得る課題です。良かったことは伝えられても、改善してほしいことをどう伝えればいいのか分からない。関係性を悪くしたくないため、言うべきことを言えないこともあります。研修を通じて、リーダー自身もその課題と向き合います。

 

<受講者のお声>

  • 望ましい行動とそうでない行動をセットで伝えるようにしたいです。
  • 相手に改善を求めるだけではなく、自分についてのアドバイスも求めるなど、配慮を持って尊重しあいながらフィードバックし合えいたいと思います。

  

「部下に注意する」のではなく、「どうすれば互いに伝え合えるチームになるのか」。リーダー自身も、自分の振る舞いを改善するだけではなく、スタッフの行動を見て、フィードバックし、チーム全体を育てる側へと視点が変わり始めています。

  

さらに、このようなコメントがありました。

  • 回を重ねるごとにみなさんの発言が変化していることに驚きました。
  • スタッフの変化から、自分自身も学んでいると感じます。

  

リーダー自身がスタッフの変化を感じ、その変化から自分自身も学ぶ。これは、組織が大きくなったつかだファミリークリニック様にとって、とても重要な変化です。

 

「院長が人を育てる組織」から、「組織の中で人が育っていく組織」へ。

半年間の取り組みの中で、仕組み化され始めています。

半年は、ゴールではなく途中経過

個人の気づきからチームの変化へ。1年間の取り組みはこれからも続く

今回ご紹介したのは、1年間にわたる取り組みの中間地点までの変化です。

半年ほどを振り返ってみても、「自分がどう見えているのか」という気づきが、徐々に「相手にどう感じてもらいたいか」へ変わり、それが、「スタッフ同士での成長やリーダーとしての成長」へ変化しました。

    

特に、多職種・多施設へと組織が急速に広がる時期だからこそ、一人ひとりがそれぞれの経験だけを頼りに働くのではなく、職種や立場を超えて共通言語と共通の学びを持ち、それを日々の行動に落とし込んでいくことが重要になります。

もちろん、まだ「意識しないとできない」という声もあります。だからこそ、この取り組みはここで終わりではありません。

学ぶ。

現場で試す。

振り返る。

フィードバックを受ける。

そして、もう一度実践する。

  

この繰り返しを続けながら、意識して行っていることが自然な行動へ、個人の変化がチームの変化へとつながっていくことを目指します。

  

つかだファミリークリニック様の取り組みは、これからも続きます。今後、スタッフやリーダー、そして組織全体にどのような変化が生まれていくのか。引き続き、その歩みをご紹介していきます。